
2月の釣り Ver.1
■ 厳寒のち強風の湖上は意外に混雑
2月6日 今度こそはと息巻く道北のイトウ釣りは、またしても大荒れと大雪の予報に阻まれてしまった。
道北の豪雪地帯にある湖では数日前から雪が降り続き、観測史上5番目に多い積雪量にスノーモービル送迎も時々
スタックするほどという。
結局、先週と同じ釣り場に行くことにしたが、道東は相変わらず晴れマークがどこまでも続くかのように安定した天気
で、その分だけ気温は低くなりそうだった。
出発時の気温はマイナス15℃くらいだったが、おぼろ月に見守られるように走り、大雪湖付近になると気温はマイナス20℃ほどに下がると細かい雪が舞っていた。
峠を越えて間もなく積雪量がみるみる減り始め、国道のアスファルトが現れてくる。
東の空が薄っすらと明るくなり始め、駐車場には先客の車が停められているが人の姿はなかった。
荷物の準備をしているうちに次々と新たな車が停まり始めたのは、おそらくライトが要らない明るさになる時間帯の到着を考えてのこと
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だろう。
この一週間の間に僅かに積もった雪のせいか釣り場への道は幅が広くなっていて歩きやすく、林を抜けたときにはいつものように空の一部が赤く染まり始めていた。
何もない平らな湖上を進み、最初のテント群を少し過ぎた付近でKさんが立ち止まり場所を決めたようだったので、引き返して誰も手をつけていないまっさらな場所に決める。
テントを開き2箇所のペグ止めをしてからイスを置いて穴の位置を決めたのは、前回穴の位置が若干使い勝手が悪かったせいだった。
さっそく穴あけを始めたが、氷に刃があたる感覚がなかった。
というのは刃付近に付着した氷のせいで氷の表面を撫でているよう
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な削り方をしているので、なかなか掘り進まない。
ドリルの刃付近に付着した氷を取り除きながらの作業なので、僅か3個の穴をあけるのに20分もかかってしまい、ほと
んどの体力をここで使い果たしてしまった。
20分も要した理由のひとつには寒さによる指先のかじかみがあり、指先を暖めるためには自分の素肌が一番で、体は暑いくらいに熱を発しているから丁度よかったのである。
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穴の深さは50cmくらいになっていたが、なんとか3個の穴をあけてガソリンストーブに火を入れた。
テント内の作業はKさんに任せて、私はサクラマス用の穴あけをするために再び外へ。
既存の穴を利用すれば楽だろうと試してみたが、どの穴も氷は固くなっていて、結局2個だけあけてテントに戻ることに
なった。
エサとなるワカサギもこの日は取り扱いが大変で、ぼやぼやしていると凍ってしまうので速やかに沈めなければならず、容器に水が少なくて跳ねたワカサギの尾びれが凍り付いてしまい、気付いたときには尾びれだけが容器の壁面に残されていたこともあったほどだった。
気温はマイナス20℃よりは更に下がっているだろうが、テント内はガソリンストーブのおかげでかろうじてマイナス一桁の気温になっていたので、これでもとっても暖かい。
ワカサギの反応は先週よりは好く、15mの底から変わらず型の良い重量感のあるワカサギが釣れてきていた。
やがて太陽が昇り始めた頃には次々に釣り客がやってきてテントが立てられ、賑やかな湖上になっていた。
意外にも野天釣りの人が多く、テント内でも穴の表面に氷が張るほどシバレがきつ
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いのに、実に楽しそうな歓声が聞こえてくる。
その後体力が回復したところでサクラマス用の穴を2個追加してアタリを待つが、アタリセンサーは何も知らせてはくれなかった。
9時36分のこと。
Kさんにウグイが釣れたのでそれを写真に収めていたときだった。
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アタリセンサーが「ピピピ---」二人でテントを飛び出しセンサーが鳴る方向に駆けつけると竿先が大きく揺れていた。
Kさんにデジカメを渡し、アラームのスイッチを切り、穴の保温シートを外して合わせを入れる・・・軽い??
残念ながらサクラマスは逃げてしまったらしく、エサはいなくなってしまっていた。
しかしながら、自作のアタリセンサーの信頼性を確信し、外は寒いだけに安心して任せておけることとなる。

10時半頃になると雲が広がり太陽は顔を隠してしまったが湖上は更に増えた太公望で一層賑やかになり、野天釣りの
人は数を増しているが気温は日中にもかかわらずマイナス10℃に変化はない。
11時過ぎにはどこからともなく焼肉の匂いがテントの中まで入ってきて、外を見ると10人くらいの団体さんが外で焼肉を食べていた。
今回はアルミロールマットを持ってきていたので、テント内でそれを広げてみたところ意外と快適で、何よりも背を伸ばして横になれるところが好い。
何年か前のこと、メガオさんがこのマットを使って胡坐をかい
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たり、横になったりしてワカサギ釣りをしていたことを思い出す。
11時10分、「ピピピピ---」アラームが鳴った。
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すぐに飛び出したがKさんはマットに横になっていたので私が一人で駆けつける途中、アラームは鳴り止んだ。
しかし、竿先にはサクラマスの反応が出ているので、今度こそはと合わせを入れる・・ヒット!
確かな手ごたえに不安は消え、サクラマスのファイトを楽しむ。グングンと引きが氷の下から伝わり、竿先がグイグイ刺さりこむ。
やがて、穴からレギュラーサイズのサクラマスが飛び出し雪上を跳ねていた。
リリースするためと寒さのためにまともな写真は撮れなかった
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が、この一匹でこの日の苦労はすべて報われた気がした。
午後からは風が吹き始め、それは次第に強くなってきていたので外に出る回数は減り、アタリセンサーを頼りにテント
内でぬくぬくと小窓から外の様子を伺いつつワカサギ釣りを楽しんだ。
ただ、Kさんが私の3倍以上も釣っていたので、Kさんと同じ仕掛に交換する。
補強ロープのペグ打ちを済ませた頃には周囲でテントが崩壊する声が聞こえてきていて、事実近くにあったテントが妙な形に変形していた。
テント内に風が吹き込むことはなかったが、気温が下がり始めたのでストーブは2台稼動させるほどだった。
サクラマス仕掛を点検すると穴は凍りつき、アタリもない。周囲では
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撤収を始める人も多くなっていた。
ワカサギは反応が少なくなっていたので14時前には片づけを始めるが、強風なので先にサクラマス仕掛を全てテント内
に持ってきて片づけをする。
テント内で小物を箱の中に片付け、風に飛ばされる心配のないものは一まとめにソリの近くに置いておき、最後にロー
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プのペグを外しテントをたたむと、テントは蛸の立ち姿のような形になり、ここでペグを抜いてまとめると風の影響をほとんど受けずに撤収することができた。
釣り場を離れて振り返ると、ブリザードのような地吹雪の中に残っている釣り人のテントがぼんやりと見え隠れしていて、再びソリを引き始めた。
途中、風の冷たさに顔が痛くなるほどだったので、湖の入口近くにいつも建っているテントの横で風を除けて休憩をしたほどだった。
林に入ると風はおさまり、駐車場もさほど風は強くなかった。
地吹雪のような強風は峠を下りたあとも時々続いたが、層雲峡の滝横にでるトンネルを抜けると嘘のように雪も降っていなければ風も吹
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いていなかった。
翌日のこと・・・11個の穴あけをした先週よりも、わずか7個だった今週のほうがダメージは大きく、腕の筋肉が痛くて大
変だった。
エンジンドリルが欲しいと思ったほどだが、これも筋肉の鍛錬かなと思うことにする。
■ 道北に鮭鱒を求めて
2月13日 ようやくこの日を迎えることができたこの朝、前日までの暖かさとは違って外に出るとブルッと体を震わせるよ
うなマイナス二桁の寒さだった。
スノーモービルの送迎開始時刻は7時と遅いので、出発時間も当然遅かった。
道東へ向かった先週とは違い未明のこの時間でも車が多く、それでも高速道路は路面が出ていないにしても流れは良
い。
最後のコンビニで買い物をしてから車内で朝食を食べつつ明るくなり始めたきれいに除雪してある道を走っていると、
湖が近くなるにしたがって靄のような霞んだ風景に変わる。
湖の近くの小集落は毎年のことながら驚くほどの豪雪で、家一軒がすっぽりと雪に埋もれて見えなくなっているところも
少なくなかった。

ここから回廊のような雪の壁の道を走り、ほどなく湖へ下りる直線の緩やかな坂道がみえてきた時には、すでに7時を
過ぎていた。
車上から受付を済ませて車を停める場所を探すも、前浜はすでに満車状態になっている。
かろうじて一箇所だけ空いていた隙間に車を停めて管理棟に向かうと、スノーモービル乗り場はそれを待つ釣り人で列
を成していた・・・。

管理棟の中も賑わっていて、トイレを済ませてからスノーモービルの受付に向かうと、ここもスノーモービルだけではなく
貸し竿などの対応に追われているので再び待ち時間。
急いでいるわけではないし並んで待っているスノーモービル乗り場のことを考えゆっくりと準備をして、車の近くに落ちていた貸し竿を受付に届けてからソリを引いた。
すでに陽が射しはじめていたが、雲に阻まれ太陽は少しだけ顔をみせただけで再び曇り空になる。
乗り場は先客が二組だけになっていたが、そのうちの一組が驚くほどの荷物を満載したソリだった。
高さは80cmほどもあろうか、男性3人のグループだったがそれにしては荷物が多すぎるような気がしたのは私だけだろうか。
7時33分、ようやくやってきたソリで出発し、前浜に下りる坂は特にゆ
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っくりと走るうちに左右には釣り人が迫ってきて、次々と近づいては去っていく。実際にはこちらが動いているだけなのだが・・。
各釣り場はすでに最高潮に達しているのか、遠目にも釣れている様子や集中している眼差しさえみえるようだった。
私たちが目指すポイントは長い直線のその先にあるので、しばらくは少しだけ上げた速度のスノーモービルにしがみつくように乗っていたが、慣れてくると片手で体を支えていても何の不安もない。
すれ違うスノーモービルがあったので目的のポイントは先客があることは想像できるが、ポイントに近づくとテントや人の姿が見えてきて、目的のポイントには先客がいたのである。
スノーモービルのガイドに場所の確認を促されたので、今回は初とな
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る対岸のポイントに入ることにした。
2m50cmにもなる積雪と聞いていたのでどれほどぬかるのかと思っていたが、絞まった雪は膝までは埋もれることもなく、とりあえずワカサギの試し釣りをはじめるための穴あけをする。
しかし、この穴あけが容易ならぬ作業だった。
コツを掴めばそうでもないことは後でわかったことで、この一個目の穴あけに多くの体力を消耗することになる。
今回のために用意してきた2m以上もあるドリルは余裕を持って最後の氷を貫通したものの、引き上げは簡単ではない。
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中から出てくるシャーベットは氷掬いで何度も何度も取り出し、ようやく仕掛を下ろせる状態になるのである。
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休む間もなく、大物狙いの穴あけに向かうが、道をつけながら進み、場所が |
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決まるとその周りの雪かきをしてようやく穴あけをする。
結局、2箇所に穴あけをして引き返してきてしまった。
ワカサギの反応はと言えば、何と!まだアタリさえないと聞いて絶望する・・・。
さらに、この日の気温はマイナス20℃以下にもなって
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いたので、寒くてアタリがとれないからテントを立てて欲しいとせがまれたので、やむなく釣果のないうちに設営をするこ
とになってしまう。
それでも設営からほどなくしてワカサギは釣れだし、安心してそのワカサギをエサに仕掛を投入した。
その後、穴を追加して全ての仕掛を投入し終わったときには10時半を過ぎていた。
入釣したかったポイントからは二度ほどアタリがあったような歓声が聞こえ、楽しそうに笑っている声も聞こえていたので、次は自分にもアタリが来ると信じてテントに戻る。
空は雲が消えて青空が広がっていて、テントに射し込む日差しが眩しく暖かい。
ようやく私もワカサギ釣りの準備を始め仕掛を下ろすと反応は好く、この湖らしい小型のワカサギが元気に姿をみせてくれた。
このポイントは先客がたった一人しかおらず、私たちが着いたときにテントを広げていたのだが、聞くと前浜でエサの確保を試みるも30分で一匹も釣れず、その後は徒歩でここまで1.5km歩いてきたと言う根性の人。
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この時はすごい人もいるものだと感心していたが、毎週通っていた先週までのポイントは1.2kmほどに加えてアップダウ
ンを考えると・・・大差はないかとも思ったりして。
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8本の仕掛を投入していると言うが、私の見る限りでは12箇所に穴があるこの釣り人は、1本だけサクラマスを釣ったとのこと。
お話好きらしく、天気も好かったせいか長い時間色々なお話を聞かせていただいた。
聞いた話では、一番釣れるポイントはやはりあの場所らしく、ではなぜここに入ったのかとの問いには「エサのワカサギが一番確実に釣れる場所」とのこと。
あまり良い場所ではないらしいが、一本釣れているならばと粘ってみることにする。
このとき私は上着を脱ぎTシャツに厚手のフリース一枚という軽装だったが、さほど寒くはなかった。
早めの昼食を楽しみ、置竿のエサの点検に向かうも全く変化
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がなく、次第に絶望がみえはじめてきた上にワカサギの反応も悪くなってきていた。
帰りのスノーモービル迎えの時間は15時なので、30分前には片づけをはじめなければならないなあと話していた14時少し前のこと、ストーブとラジオにまぎれて聞こえてくるアラームにKさんが気付いた。
二人揃ってテントを飛び出し小道を走り音の出ている竿に向かうと、3番目の竿が「ピピピピ
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ピーーーー!」と鳴っていて、竿先には微かに反応が見える。
アタリセンサーを止めてデジカメをKさんに渡し、準備が整ったところで合わせを入れると・・・乗った!
引きが好く重い手ごたえを数回巻上げた後でいきなりドラグが鳴り竿先が引き込まれたので、これはもしかするとイトウか?と思ったがそれほど重くはなく、タナが浅いので
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すぐに穴からサクラマスの頭が見えた。
一気に抜き上げると美しい魚体のサクラマスが真っ白い雪上に跳ね、私はラインを持って魚をカメラに向けた。計測すると34cmと大きくはなかったが、この湖では初物となる記念すべき一本となった。
青空はすっかり消えてしまいワカサギは更に反応が悪くなっていたが、サクラマスの釣果に満足していた私は14時20分には全ての仕掛を片付け始め、テントをたたもうと外に出たときに丁度こちらへ向かってくるスノーモービルのライトが見えた。
歩いてきた隣の方も往復料金の半額を支払い一緒に乗って帰ること
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になり、15時03分には出発。
帰りは色々と教えていただいたポイントを確認しながら、周囲の風景を楽しみ前浜に近づくと、まだまだたくさんの釣り
人がワカサギ釣りを楽しんでいる。

しかし、駐車場の車は3分の2ほどに減っていて、出発する頃には雪も舞っていた。
釣り場を離れて15分もすると青空が再びみえはじめ陽も射してきて、暗くなるにはまだまだ早いことを知る。
運転をしながら、想いは早くも次の釣りへ向かっていたことは言うまでもないだろう。

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