12月の釣り Ver.1



 ■ 鮭児(ケイジ)Get!

まことに小さな国の、ある釣り人が絶頂期を迎えようとしている。
その列島のなかの一つの島が北海道であり、北海道は道北、道南、道東にわかれている。
さらに道東の主邑(しゅゆう)は帯広、釧路、北見、網走にわかれ、もっとも北に位置する釣り場に、正に絶頂期を迎え
ようとしていた私が向かっていたところから物語が始まった。


12月4日 本当はこの日に釣りをする予定だったが、全国的な大荒れの天気になってしまった。
結果的にはこれが大変好かったのだが、それはまだ先の話になる。
出発時には吹雪という生憎の空模様ではあったが、道東に向かえばもしかすると乾燥した道路になるかもしれないとの期待があった。
高規格道路の白滝インター近くになると雪はすっかり消えて、丸瀬布が近づくと路面は乾いていたのである。
さらに、新ルクシトンネルを抜けると夕焼け空になり、その先は走るほどに雲が少なくなった。
道の駅からメガオさんに連絡を入れたところ、何と!港で私たちを待っていてくれたのであった。
食材の買い出しをしてから合流して、車内で3人一緒にポイント選びをして釣り場所が決まる。
メガオさんは他の目的のために去ってしまったが、この夜は15台ほども車中泊の車が停車していて、幸い暖かい夜だ
ったので暖気運転をしている車は数台しかなかったほど。
早い時間の到着だったので、20時過ぎには横になってしまった。


12月5日 4時半には起きてしまい、外をみると何と車の多いことかほとんどびっしりと釣り場が埋まってしまっていたのである。
無風に近く雲がほとんどない空は12月とは思えない暖かさで、これで魚がいてくれれば最高なのにと考えながら準備を進める。
6時前にはキャストを開始したが、アキアジではなくニシンのサビキであった。
お隣さんもニシン狙いだったが、すぐに近くでアキアジが釣れてしまったために僅か数投しかキャストしていない。
しかし、アキアジはポツポツとしか釣れず、私たちの左側ばかりに釣れていたのである。
仕事前に様子を見に来ていたメガオさんが、ニシンのサビキでチカ釣りをしてチカが釣れ始めるが、欲しい人がいなかったのですべてリリースとなり、型が良いものばかりだったので惜しい気もした。
朝陽が昇りはじめたのは6時45分頃で、突然に現われ全てが見えるまでに2分とかからなかった。
その後、釣具店で釣れている情報を聞いてやってきたウルシさんが隣に入釣し、Kさんと二人きりだった釣り場が賑やかになり、周囲で
も複数人にヒットするようになってきていた。
8時半少し前のこと・・・ようやく私にアタリが来るのだが、これが実に渋い!
あまりの渋さに、アタリがあってから合わせを入れるまでに5mほども使ってしまうほどで、なんとかほどほどの銀ピカ雄
をゲットした。

         
            1本目はキープ                            顔の割りに渋い
次のアタリはもっと厳しいもので、食い上げたり離したりしているうちになんとか合わせを入れたもののすぐにフックオ
フ・・・。
その場から誘いをかけると近くを泳いでいたアキアジが誘いに乗って、再び食ってフッキングといった辛抱のヒットだっ
た。
銀ピカではあるが縞が入っていて、顔もやや怖いのでリリースとした。
しかしこのような渋いアタリというものは、誰でも簡単に釣れるアキアジ釣りよりも面白く、ヒットするまでの楽しみ方が私
は大好きだ。これもいつも書いていることであるが・・・。
ウルシJr夫妻も来ると聞いてさらに賑やかになるなあと楽しみにしていたところ、師匠が奥様とともに現れた・・・。
なんでもトバ用のアキアジでも釣ろうかと様子を見に来たところ、見たことのある車だなあと吸い寄せられるように来て
しまったらしい。
もちろんそのまま釣りをすることになったことは言うまでもない。
お昼近くになってどっぺさんが現れおしゃべりをしていたのだが、どっぺさんといえば彼の帰り際に私がヒットしてタモ入
れをしていただくことになっている。

           

今回ももうそろそろ行かなければならないと話していたので、この朝彼が遠投でヒットさせた話に乗って力の入ったキャ
ストしたところ・・・なんとアタリ・・・ヒット!
今回もどっぺさんにタモ入れをしていただき、彼は颯爽(さっそう)と帰って行った。
ちなみにアキアジの方はというと、先ほどのアキアジによく似た雄だったのでリリースとなった。
昼食を車内でのんびり温まりながら食べているときにウルシJr夫妻が到着し、食事をしながら外を見ている間にもポツ
ポツと釣れていた。
この日師匠はハンディタイプのフルハイビジョンカメラを持参していたので、今日はこれでみんなの釣れている姿を撮っ
てやるとオレンジ色のケースに入れて持ってきていた。
しかしこの時期のアキアジはヒットしてから取込みまでがあっという間に済んでしまうので、車にカメラを取りに行ってい
る間にだいたいは網の中だった。
食後の12時45分、相変わらずの渋いアタリにヒットしたのは強面のブナ雄で、久しぶりに自分でタモ入れをした。

         

この時師匠にもヒットしていて、なんとダブルヒットとなったのだが、この後にもっと凄い仲間内の4人にヒットという出来
事も起こる。
このアキアジは飛び出した歯が網に絡まり、リリースをするときにグルグル回転してから海に消えていった。
12時51分にはウルシさんにヒットするが、強烈な合わせのせいか定かではないが切れてしまい、タイミング良くウルシさんの隣の方がウキアジをヒットさせてゲットとなった。
この後にとんでもない魚が私のルアーにヒットするのだが、興奮し過ぎたのかあまり記憶に残っていない・・・。
12時58分頃のこと、ごく普通のこの日のアキアジのヒットゾーンでのヒットで、たぶん師匠にタモ入れをしていただいたと思うのだが、周囲からの凄い銀ピ
カだ!という声だけが記憶にある。
網の中のアキアジを見た時に、これはただのシロザケではないなあとすぐにわかるほどの輝く魚体だった。
メジカだ、ケイジだ、キングだ!と周りでは勝手に言っているが、キングでないことは明白だった。
自宅に戻って割腹した結果、どうやら鮭児(ケイジ)だったことが判明した。
生殖器は白子とも筋子とも判断ができない。各鰭は破れやすいために全てが裂けていて、ケイジの特徴である鱗のはがれやすさは、洗い流しただけでほとんどがはがれ落ちてしまった。 
身については腹の厚さが普通のアキアジとは全く違っ

ていて、皮が薄く皮と身の間の脂がぶ厚い。 ケイジは1万本に一本の魚だというが、それは漁の話であり、実際に釣り
場のそれも私が通う港に限って言えばどうだろう?
ひとシーズンに1万本までは釣れないだろうから、釣りの方が確率は高いような気がするのだが・・・。
事実、この日は3本、翌日は1本、さらに翌週の土曜日に1本釣れていて、今年に限ってのことではあるがかなり確率
は高い。
ちなみに、お金の話で恐縮だが、2kg前後のもので7万円ほどでネット販売されていて、とても買って食べようとは思わ
ない魚であるから、生涯最高の贅沢をさせていただこうと思っている。

        
         生殖巣では雌雄判別できず
13時01分、Jr奥様にヒット!
真新しいショッキングピンクの手袋でアキアジとのファイトに挑み、ウルシさんのタモ入れにて無時ゲットした時には「や
ったー!」と喜びの声をあげていた。
ただ、後ずさりするときに、さきほどウルシさんが釣り上げたアキアジを踏みそうになっていた。
この後、ゴッドボーズさんがようやく釣り場に着いて、この日の状況を興奮気味に私が話していた13時08分のこと・・・。
この時はこの日一番の明確なアタリがありヒットした。
到着早々のゴッドボーズさんの仕事がタモ入れとなってしまい、銀ではあるが縞がある雄をリリースした。
しかし、この後は釣れない時間が続き、沈黙を破ったのが巨大な群れの通過だった。
13時43分、ウルシさんにヒットして間もなく師匠にもヒットした。

この日最後の6本目
二人がほぼ同時にバラしたと思っていたらゴッドボーズさんにヒット!
師匠がタモ入れをしてフックオフ直前に無時ネットインとなった時、私のウキが半分消えていた・・・。
撮影中だったので片手合わせになり、師匠に駆け付けて頂いたときにはすでに外れていた。
13時48分、次はJrの出番がやってきた。
棚を作り変えた彼の仕掛けは3投で3ヒットの快挙で、僅かな時間の間のヒットに驚かされた。
この後はゴッドボーズさんの独り舞台となり、僅かな時間の間に4本目となる3本を釣り上げていた。
最後の14時半前のこと・・・。
ゴッドボーズさんに再びあの魚がヒットした。
そう、鮭児である。
もちろん私がタモ入れをさせていただき、やや小ぶりだったのですぐにネットイン!
鱗飛び散る美しさに、再び釣り場に活気が戻ってきた。
それにしても、鮭児が仲間内で別な時間帯に2本も釣れてしまうとは驚きである。
ゴッドボーズさんも毎週毎週コツコツと通い続けて、たぶん皆さん同じ目的であろうキングサーモン狙いだったのだが、鮭児を手にすることとなった。
彼はメジカとばかり思っていたそうで刺身で食べたそうだが、鮭の味が全くせず、素晴らしい味だったそう
だ。
その後、ゴッドボーズさんがアキアジがウキを食べていると言うので見ると・・・何と!鯉がエサに食いつくように海面の
ウキにゆっくりと顔を出して咥えようとしていたのである。
その姿は実に間抜けでみんなに笑われていたが、あんな食い方をしているから今のアキアジはアタリがはっきりしない
のだろう。そのアキアジは、その後も2回ほど顔を出していた。
15時過ぎにウルシJrが釣ったのが最後で、その後は片付けを始めたのだが・・・帰りかけた日が暮れようとした薄暗い
時にヒットしはじめ、私たちの周りの釣り続けている人の全てがヒットしているように見えるほど巨大な群れが通過して
いるようだった。
名残惜しくはあったが、後ろ髪を引かれながら釣り場を後にした。


鮭児については数日前に釣れていたと聞いたが、翌日も溢れるほどの釣り人の数のなかに一本の釣果があったらし
い。
私もメジカかケイジか半信半疑だったのだが、愛読書の「知床の魚類」の詳しい解説を読んで鮭児を確信するに至る。
たぶん一生に一度あるかないかの体験だけに、いつまで経っても興奮が収まらない。
仲間と約束した次週の最後となるだろうアキアジ釣りが無事にできれば、この興奮も自然と覚め落ち着くだろう。





 ■ 今期最後のアキアジ釣り

12月10日 天気が好いので今週も出かけることにしたが、土曜日一日だけの一発勝負のつもりだった。
幸いこの日の昼過ぎに港に到着し、休日だったメガオさんが様子を見に来てくれた。
先週の釣り場の近くに空きがあったので釣り座はすぐに決まったが、周囲の釣り人に状況を聞くとあまり釣れていない
と皆さん口を揃えて同じ答えが返ってくる。天気は好く晴れていて、暖かく風もない。

          

足元は残雪が残っていて汚れ隠しをしてくれているので、打ち捨てられたヒトデ以外は気持ちが好いくらいにきれいだ。
メガオさんとおしゃべりをしながらリーリングしていたところ、アキアジからのやや明確なアタリがあり、さほど苦労するこ
となく合わせを入れた。
しかし、フックアウトしたかと思うほど手ごたえは軽く、すぐに海面で暴れ出しヒットしていることがわかった。
メガオさんにタモ入れしていただき無時ゲットしたが、クチグロかと思ったほど小さかった。
もちろんサクラマスではなくミニアキアジで、いわゆるロスケ型の特に小さなものである。
大きさは53cm、1.1kgの記録的な極小の雌だった。
その後師匠が到着して一緒に釣り続けるが、アタリさえなかった。

これが最後にふさわしいアキアジとなる
前回は暗くなりかけた頃から大爆釣モードになったので期待して続けたが、結局ほとんど誰も釣れずに終了となった。
唯一好かったのが、日が沈んでから雪で真っ白になった高い山々が、日に照らされて朱色になっていて美しかったこと
くらいか・・。
片付けをしていると仕事帰りのゴッドボーズさんがやってきて、翌日は一緒にできるかもしれないとのことだった。


12月11日 のんびりしていたので釣り場に着いた時にはすっかり明るくなっていて、近くで早くもアキアジが釣れていた。
ゴッドボーズさんが先に到着していて、次いで師匠が、私たちは買物をしていたので最後になってしまった。
準備が整う頃には釣れなくなっていて、釣れたといっても周囲で釣れた数は3本程度だったが・・。
7時前には正面に日が昇りはじめたが、まるで満月のような色と明るさが幻想的だった。
その後メガオさんが到着し、マルさんがこの日解禁になった港から様子を見にやってきてそちらの情報も教えてくれたようだった。
8時45分、車内で暖をとっていた時に一人で続けていたメガオさんにヒット!
駈けつけると型の好い銀ピカのアキアジがヒットしていて、撮影かタモ入れか考えた末にタモを選びアシスト。
なかなか元気なアキアジは、2度目に近づいたときにネットイ

12月とは思えない賑わい
ンとなる。
さっそくマルさんに電話すると、怖い顔の割にかわいい車に乗って現われ「いいもんでしょ!」と言って持ち去った。
ここで港内が俄かに騒がしくなったのでどうしたのかと思ったら、私たちの右20m程のところでケイジが釣れたと人が集まっていた。
すぐに見に行くと、まぎれもない鮭児がそこに鱗だらけ、血だらけの姿でそこにあった。
先週2本の鮭児を見ているので一瞬にして鮭児の区別はわかり、釣り人の中には鮭児に関する講釈を語る人も現われていた。
そんな騒動が終わった頃にようやくキッシーさんが到着したが、全体的にもあまり釣れておらず向かい風が冷たくなっていた。
10時12分、暖をとっていた車内にKさんが戻ってきてゴッドボーズさんが釣ったことを教えてくれた。
Kさんがタモ入れをしたらしく、この魚が仲間内の最後の一本になった。
というのもこの頃には向かい風がさらに強くなり、波が岸壁に打ちつけられ風によって釣り人にかかってしまうほどだったので、他の場所を探したのだが無理をするほどのことでもなかったので納竿とした。
昼食を食べてから、師匠が撮影した前日からの動画観賞をして解散となる。
おそらく今シーズンはこれが最後の釣行だろうが、次のワカサギ釣りのための湖の結氷がほとんどみられないので、今期はさらに解禁が
遅れてしまうのだろう。


5か月近くにも及んだアキアジ釣りもあっという間に過ぎ去り、少しは空しくなるのかと思っていたが、未だに先週の鮭
児の興奮が残っていて、次の釣りがはじまるまでは尾を引きそうだった。



2010年の釣り 終了  


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