3月の釣り Ver.1



 ■ 朱鞠内湖のワカサギ

3月15日 週末になると「大荒れ」が多い今シーズンのワカサギ後半戦だが、先週もやはり「大荒れ」だったために諦
め、まさかの今週末も大荒れの予報にガッカリしていたところ、日曜日は風は強いが曇りに落ち着きかけた予報をみ
ての出撃だった。
起きて外を見るとすでに明るくなっていて、吹き溜まりがいくらかあったもののさほど雪は降っていなかった。起きたとき
に大雪だったら中止にしようと気も弱くなっていた。
高規格道路は早朝に除雪車が走ったのか走りやすく、対向車とは時々すれ違うが前後に車はない。
独り占めした道を快適に走っていたところ、目の前に「この先 除雪中 追越禁止」と表示された車に行く手を遮られてしまった。
道の真ん中を走っているので諦めてついて行くと、後方からトラックが勢いよく近づいてきて私の後ろにピッタリとついてくる。
しばらく走るとKさんが表示が変わったと言うので、見るとなるほど「この先 除雪中 間もなく解除」が表示されていて、もう少し先に片側2車線があるのでそこで追越ができることが判断できた。
そして数分後、2車線に変わったところで「除雪中 →→ 追越注意」に変わり、ようやくノロノロ運転から開放された。
比布インターチェンジから高速道路に乗換えた頃には降雪量が多くなり、視界を遮られるほどではないが雪は降り続い
ていて、ライトに反射する左右の反射板が頼りになる。
士別市内のコンビニで買物をして、40号線から下川国道と呼ばれる239号線に入るが、この道も除雪済みの走りやす
い道だった。
30分程で豪雪地帯がこの目で確認できる朱鞠内の集落に到着すると、ほとんど雪に埋もれている民家もあり速度を落
として走っていると、2年前に追突されたときにお世話になった派出所が新築されて場所も変わっていた。
朱鞠内湖に到着したのは7時半過ぎ、料金の支払いを済ませると管理棟の近くに車を停めてトイレに寄ってからスノー
モービルの受付に向かう。
          

管理棟の中に入り、小窓から最近ワカサギの釣果の好い富成岬のマス釣りについて聞いてみたところ、富成はマスは
ほとんど釣れないですよと、冷たい返答だった・・・。
しかし、この時間から前浜でエサのワカサギを確保してから別の場所に向かうことになると遅くなってしまうし、降り続け
る雪にマス釣りへの思いは失せていたので、結局は富成岬に決めたのである。
前浜の駐車場は満車にも見えるほどたくさんの車で埋まっていて、雪は小降りになっていたが遠くの島は霞んで見え
る。
          

管理棟横のスノーモービル乗り場には数台のスノーモービルが停められていて、その後ろには大きなソリがついてい
る。係員に切符を渡すと私のソリを大きなソリにすっぽりと載せ、Kさんは運転をする係員の腰にしがみつくように乗  
り、私はその後方に乗ると動き出した。
前浜に下る緩やかな坂道はやや広い道なのでここから釣り場に下りる人もいるので、そのせいで低速走行しているのかと思っていたところ、平坦な氷上になっても加速はほんの僅かしかしなかったのは吹雪気味だったせいなのか、この時も遠くの島までは充分には見えない。
朝のうちは突風が吹くこともあり、テントを飛ばされた人たちが数組いたほどだったと係員が話してくれるほど、スノーモービル上は低速走行のせいか静かだった。
スノーモービルは右にゆっくりと旋回して前浜沖を走っていると、親子連れの子供がこちらに雪球を投げつけてきたが、距離があるので
届きはしない。
弁天島とカラス島の間を走り、その先には目的地となる富成岬が微かに見えてくる。
近づくと3張ほどのテントが岬近くに見えていて、先端付近に停留所の看板があってスノーモービルはそこに停車し、乗り場から5分ほどでの到着だった。
はじめての場所なのでポイントを聞くと、一番釣果が良い場所が空いていると教えてくれて、最後にそこらじゅうに穴があいているから落ちないようにと教えてくれた。
前日までの雪が釣り跡をすべて隠してしまっていたので足で踏み探りながら穴を探すと、膝までも埋まりそうな柔らかい場所がいくつもあ
ることがわかった。
湿った雪が降っていたので試し釣りをせすにテントの設営にとりかかる・・・結構な積雪なので踏み固めただけでは不十分なので、除雪をしてから踏み固めることにする。
穴は既存の穴を利用したのでドリルは使わずに済み、テントを開くと突風があったがその時だけですぐに収まった。
ペグで固定したが、いいかげんな踏み固め方だったせいかテントは歪んでいる・・・。
荷物を運び入れて仕掛けを投入したのが8時40分過ぎだった。
Kさんが先に仕掛けを下ろすと・・・すぐにアタリがあり、それは嫌な引きをしている。一匹目からウグイとは先が思いやられる。
Kさんが底、私は表層を探るとどちらもアタリはすぐにやってきたが、時々ウグイが顔を出す。表層近くはウグイが少な
いのでKさんも棚を変えてみると、あまりウグイは釣れなくなった。
この日は気温が高くストーブは必要ないくらいで、指先が冷たくなることはなかった。
しばらくしてワカサギも充分に確保したので、サクラマスの穴あけに外に出てみる。

        

適当な場所を見つけてドリルを回したが、今回は延長ドリルではなく少しだけ長いドリルだったために氷を突き抜けるこ
とができず、自分の穴を確保することができなかった。
既存の穴は岸際ばかりで2穴だけ仕掛けをセットしてみるが、釣れそ
うな気は全くしなかった。
依然天気は悪く雪が降り続け、時々突風も吹いたがテントに影響が出るほどではない。
雲が薄くなった部分から太陽が見えることもあったが長くは続かず、周りのテントから人の声も聞こえてこない。
しかし、ワカサギのアタリが止まることはなく、時々複数匹のワカサギが釣れると手ごたえも一際よくなる。
沖目に穴があるはずだと探していたKさんだったが、戻ったときにうっかり穴にはまってしまい膝上まで濡れてしまうハプニングもあり、これが係員が言っていた「穴に注意」だなと納得する。
時々マスの仕掛けを点検するも全く反応はなく、適度に釣れるワカサギ釣りを楽しんでいるうちに昼になり、時々釣れてしまうウグイは二桁にも達していた。
帰る時間が決まっているのは納竿時間の判断も容易なことで、15時には片付けを始めると他のテントの人たちも同様
に準備を進めているようだった。
15時20分にはスノーモービルが来てしまったので少々焦るが、準備が済んだ人から先に出発していった。
私達の後に来た一人が私達と同乗するらしく2台のソリを横向きに積み、私達はスノーモービルの座席に座り、その人
はソリの一番後方に座った。
15時半過ぎにスノーモービルが動き出し、カラス島付近まで進むと釣人が見えてきて前浜の賑わいも遠くに見えた。

         

時間はまだ早かったが充分に釣りは楽しめたので未練はなく、管理棟の横に着くとそのまま車にソリを引いた。
この頃になってようやく天気は落ち着き、帰りは舗装路面がでていて乾いているところもあったほどであった。
結局、当然のことながらマスは釣れなかったもののワカサギは二人で350匹ほどの釣果があり、遅い時間からのスター
トにしては充分な数だった。
いよいよ来週が、今シーズン最後の氷上釣りとなる。





 ■ 朱鞠内湖のワカサギと鮭鱒

3月19日 今シーズン最後の氷上釣りにしようと決めかけていた、イノケンさんとの釣行となった。
今回はイノケンさんが前日から我が家に来てくれて、釣り前夜の楽しい語らいからすでにその楽しみは始まっていた。


3月20日 床に着いたのが0時過ぎだったので4時間は眠ることができ、多少瞼は重かったが問題なく目覚めたのが4時40分だった。
出発は5時15分、すでに明るくなり始めていて、路面が濡れているが凍ってはいなかった。
青空が広がり始めた好天の下を快適に走り、途中でガスがかかった場所はあったが部分的で高規格道路は前後に車もなく、士別市内のコンビニで買い物を済ませ、先週と同じ道も雪がないぶんだけ実に楽である。
朱鞠内湖への分岐点を右折した先も路面には雪がなかったが、朱
鞠内地区の集落は相変わらずの豪雪がイノケンさんを驚かせていた。

         

到着は6時45分と予想よりも随分早かったので、スノーモービルの出発時間には間があった。
前浜の駐車場はこの日もたくさんの釣り客の車で一杯になっていて、トイレのあとはスノーモービルの受付を済ませる。
管理棟の前の駐車場で隣に停めた釣人に聞くと、その人たちもスノーモービルの送迎を利用する人たちで中島に行く
とのこと。
           

先客の2台が出発して、私達のスノーモービルが来たのでソリを積み込み、私とKさんが運転席の後方に座り、イノケン
さんがソリの最後部に座って出発。
デジカメの動画撮影をしながら周囲の様子を眺めると、天気が好いので前浜からその周りのひょうたん島やカラス島、
そして弁天島周囲にも釣り人が分散されている様子がよく見える。

          

一直線に続く思案島への道は、前浜を過ぎるとエンジンの出力を上げて加速する・・・ソリに乗ったイノケンさんは朝の
固雪に乗り心地が悪くお尻が痛かったと後から聞いたが、私からはイノケンさんが楽しそうに見えていた。
島が近づく右に大きく曲がりスピードを落としはじめ、どの辺に停めたらよいか聞いてきたが、初めてのポイントなので
マス釣りに適したポイントに停めてもらった。
前日から雪が降っていなかったのでワカサギとマスに使っただろう穴がたくさんあいていて、係員は穴に落ちないよう
に、と注意を促し去っていった。
遠くの湾付近に人影らしきものが見えていたので先客がいるとばかり思っていたが、後からじっくり観察すると枯れ木だ
ったことがわかり、この広い釣り場には私達3人しかおらず貸切であることが判明する。
雪に覆われた思案島、そして青空と白い雲が見事なこの時期の美しい風景だったが、最初にしなければならないのが
ワカサギの確保なのでKさんがはじめに仕掛けを投入する。
しかし反応がない・・・・・ワカサギの確保ができなければ何も始まらないのがこの大物釣りなので、私とイノケンさんも他
の穴を使って試し釣りを始めた。
          

岸から離れた穴にワカサギの反応があり、すぐに複数匹のワカサギが釣れだしたので、テントの設営場所もどちらの
穴にするか迷ってしまうほどによく釣れた。
今回は朱鞠内湖用の超ロングドリルを用意していたので試してみたところ、シャーベット層なので意外と簡単に掘り進
むが、最下部の氷の層が近づくと重い・・・そして氷の層は簡単に突き抜ける。しかしこの後が大変で、たっぷりと水を
吸った雪があるために一息には引き抜けないのである。
次に、穴を埋め尽くした雪の除去が大変時間を要する・・・氷掬いで何度も何度も取り去るが、何十回も掬ってやっと一
つの穴が使えるようになるのだ。
テントの設営を済ませた頃にはエサのワカサギは充分な数が揃っていて、Kさんが釣り続けていたのでさっそくサクラマスの竿をセットする作業にとりかかる。
外でも暖かく風もないうえに、すでに穴はそこらじゅうにたくさん用意されているから何の苦労もいらず、穴の表面の薄い氷を割るだけだった。
そして、全ての竿の準備が済んだのが
8時半過ぎだった・・・時間的には朝マズメは終っていたのだろう。
テントに戻り竿先が揺れている竿を巻き上げてみると、ずっしりと重い手ごたえがして見えてきたのは針数ほとんどに釣れていたワカサギだった。
ワカサギは表層と底より数メートル上の棚に反応が良く、仕掛けを下ろすとすぐに反応があるが、深さが7mほどあるので複数匹掛かってから引き上げると効率がよい。
しかし、時には絡んでしまったり他の仕掛けとのボンバーもあったのは仕方がない。
Kさんの穴は底に倒木なのか定かではなかったが根掛かりするものがあり、仕掛けを完全に底に下ろして釣りができ
ない場所だった。
ところが、釣り始めて1時間ほどした頃に根掛かりのような引っ掛かりがあり、その後生命反応が伝わってきたのであ
る。
だが、その反応はすぐに軽くなると同時にオモリの負荷も失われ、何者かわからぬその魚に仕掛けを切られてしまった
のである。この事件は近くに大物がいる可能性があると一時興奮したが、その後はすっかり忘れてしまった。

         

9時頃には強い引きが私の竿に伝わり大物への期待が過ぎったものの、明らかにウグイとわかる反応だった。しかし
ウグイはこの一匹だけで、その後は誰の竿にもウグイは釣れなかった。
その後もう一度Kさんの竿に強い引きがあったが、この時も何の成すすべもなく仕掛けは切られてしまう・・・。
ドラグのないリールでは大魚は操れず、仮にドラグが付いていたとしてもワカサギ仕掛けではどうしようもないだろう。
10時過ぎに外の竿の点検に出かけエサを元気なワカサギに交換したが竿は静かなもので、時折吹いていた風にゆらゆら揺れているだけだった。
しかし、テントに戻るとイノケンさんと私の仕掛けが複雑に絡み合っていて、イノケンさんの丁寧な手作業によって仕掛けは回復する。
私達の場所は管理棟から遥か遠くにあるのでほとんど何も聞こえてこなかったが、時々風に乗って微かにスピーカー
から流れる音楽とも人の声とも区別できない音が聞こえるのみである。
3人ともに順調にワカサギを釣っていて、その多くが複数匹といった釣果に満足していたが、本来の目的である鮭鱒(けいそん)が全く反応を見せていないことが気がかりだった。
場所の選定ミスなのか、棚が悪いのか、初めてのポイントに手は尽くしたつもりだったので、あとは向こうからの反応を待つばかりだった。
そして私にも、テント内のワカサギ仕掛けに何ものかがヒットした・・・糠平湖でサクラマスがヒットしたときのような引きが伝わってきたので、慎重にファイトしたつもりだったが一瞬にして軽くなり、巻き上げてみると上の針一本を残して切られてしまっていた。
正午前に久しぶりにレトルトカレーを温めて食べていた時だった。イノケンさんの声が遠くから聞こえてきて、何かがヒッ
トしているらしかった。
時間は間もなく正午になろうとしていたときだった・・・デジカメ動画のスイッチを入れて、走るには細い小道を駆ける。
イノケンさんに近づきながら聞くと巻いてみると軽いらしく、それでも何かが動いていると言う。カメラを竿の動きから穴に向けて撮影を続けると、ラインが斜めに引かれているのが見えたので何かがヒットしていることは間違いがない。
魚が表層に近づくとその引きが伝わるようで「引いてる引いてる!」と、イノケンさんが言う。一緒に駆けつけたKさんが薄氷を取ろうとしたときに魚が見えた・・・サクラマスである。
一気に引き抜いて、雪上に銀鱗が跳ねていた。3人が安堵した待望の一本目が、ようやくお昼になって姿を現したのであった。
イノケンさんが一本だけ糠平湖とは全く違う棚にしていたのだが、これが大当たりとなったのである。
当然、他の仕掛けもすぐに変更したことは言うまでもない。
この一本と棚の変更に期待は高まるが、外で待っていても仕方がないのでテント内のワカサギ釣りを続けていたが、K
さんは仕掛けの針が一本消えていたので、テントの外でワカサギ一匹一匹の口を調べていたときだった。
12時27分、外にいたKさんが「どこかで鈴が鳴っている・・・」と言うのである。
確かにどこからともなく鈴の音が聞こえてきていた。
イノケンさんとともに外に出て自分の竿先を眺めていると、私の奥から2番目の竿先が大きく揺れていたのである。
急ぎ足程度に小道を走り、途中でイノケンさんにデジカメを渡して準備は万端整ったが、鈴が鳴っている竿を通り越す私・・・。
イノケンさんに指摘されて戻る私は随分と動揺していたのかもしれない。カメラの準備が整ったところで、竿先がUの字になっている竿を持った。
Goサインが出たところでアワセを入れると、グッと手ごたえを感じるほど確かなフッキングの感覚が伝わる。巻き始めるとすぐにドラグが鳴り出し、これまでにはない大きなトルクがある魚だと判断できた。
幸いなことに最近買ったばかりのドラグ性能の良いリールだったので心地好いほどにスムーズにドラグが効いていて、ラインが切られてしまう恐れはないと安心する。
しかし、リールは3回転も巻いていないうちにドラグが働き、竿先は穴に刺さり込むように引き込まれる。
イノケンさんは「ひょっとして・・外道?イトウ?」と言っていたが、この朱鞠内湖に来
る道すがら「イトウはやっぱり外道でしょう」などと冗談交じりに話していたその魚が、もしかすると・・・いや、おそらくこの
魚はイトウではないだろうかと確信に変わりつつあった。
巨大なキンブナかとも考えたがワカサギは食わないだろうし、サクラマスはこんなファイトはしないだろうことは私でも分
かる。
この魚は大きな動きはせずにグイグイと抵抗していて、斜めに引かれているラインが氷の下壁に擦れてゴリゴリいって
いることが一番心配だった。
巻けども巻けどもその差は縮まらず、いったいいつまでこのやりとりを続ければいいのかと思っていたところ「ギャーーなんだこの魚は!」と、穴を覗きこんでいたKさんが叫ぶ。
次の瞬間に見えた魚体に「イトウだ!」「イトウだ!」私とイノケンさんが続けて声を出した。
イノケンさんは「ウワーめちゃくちゃデカイ!めちゃくちゃデカイ!」と叫び、私はどうやって穴から出そうかと困り果てた。
するとイノケンさんが撮影しながらエラに指を入れて軽く引き上げてくれて、無事ランディング。イトウはすでにおとなしくなっていて、引き上げられて雪上に横たわったままおとなしくしている。
再びイノケンさんが「ウワー!デカイ!イトウだーー!」と叫び、私は声も出せずにポケットの中に入れておいたメジャー
を探していた。
震える手で計測してみたところ60cm丁度で、イトウとしては小さい方だろう。しかし私にとっては初めて釣った氷上釣り
の大物で、それもバットが強いといってもワカサギ竿であるから超大物だろう。
イノケンさんに写真を撮っていただき、ゆっくりと優しくリリースしたイトウはぬるりと穴に滑り込んで帰って行った。
私はしばらくの間は興奮と震える手のせいでワカサギ釣りもできず、その余韻に浸っていただけだった。
騒動が収まると再びワカサギの口元に切れた針を探していたKさんだったが、結局他の場所でその針を発見する。その代わりに、ここまでに釣ったワカサギの数が180匹ほどであることがわかったことが唯一の収穫だった。
12時57分、再びイノケンさんの竿に何かがヒットしているとのことで動画撮影を始める。
たるみを取りながら軽く入れたアワセに竿が止められたことでフッキングが確かめられ「乗った!」と、思わず私が言う。
「さあー何が出るかなー」と穴を見ていると、「ピカピカのきれいな魚だよ」とKさんが言うのは、イトウはお気に召さなかったらしい。確かにイトウは丸太のようなグロテスクとも言える異様な形と色合いだが、その大きさとファイトは魅力的でもあるのだが・・・。
「さっきのより大きい!・・・・・おーー!デカイデカイ!」と、美しい腹太のサクラマスが姿を現した。
サイズは35cmだったので、これまでの今シーズンの糠平湖での一番大きかったものに並ぶ大きさだった。
テントに戻るとワカサギ仕掛けには針数のワカサギが釣れていて、こ
れはこれで楽しく気分が好いのである。
しかしワカサギはもう充分に釣ったし、気持ちは外の大物仕掛けに向いていた。
根掛かりでワカサギ仕掛けを失ってしまったので、私はワカサギ釣りを終了してテント内でのんびりして過ごす。
イノケンさんは竿からリールを外しリール単体でワカサギ釣りをしていたが、これがまた良く釣れる。
Kさんは針数が3本になってしまった仕掛けでも順調に釣り上げていて、時間的にも新しい仕掛けは出す気もないようだ。
14時過ぎに最後のエサチェックをすると、14時半までは荷物の整理をして少しづつ片付けを始めた。
スノーモービルの迎えが来るのは15時少し前なので、14時半に最後の望みをかけて点検を始めたが、私のラインは真っ直ぐになっていて全ての竿がスカだった。
しかし、イノケンさんには何かがヒットしたらしく、動画撮影をしながら駆けつけたところ、すでに巻上げが始まっていて竿先がこれまでで一番曲がっていたうえに確かな重量感があったとイノケンさんが後で教えてくれた。
オモリが見えたところで一息に引き上げると、美しい魚体が穴から姿を見せた。イノケンさんは最後の最後にして、今シーズン一番の38cmというサクラマスを手にすることとなった。
朱鞠内湖では38cmは決して大きくはないらしいので、翌年への目標がここでできたわけである。
最後にテントの撤収を済ませた頃、スノーモービルの音がして迎えがやってきた。係員の話では、この日は他の場所で96cmのイトウが釣れているというから驚きである。
私の竿にそのサイズのイトウが掛かったら、いったい何10分かかるのだろうか?想像を絶する大きさの魚に、更に来シ
ーズンへの期待が高まった。
帰路は私がソリの後ろに乗ってみたが、日中の暖かさに雪面は柔らかくなっていて、意外と乗り心地が良かった。しかし、スノーモービルが巻き上げる雪片が顔に飛んでくるので前を向いていられない。
14時55分に出発したスノーモービルから動画撮影を続けていたが、途中でカードを使い切ってしまい撮影は中断された。この日はうかつにも1ギガのカードが入れてあったので、残念ながらこの日の写真と動画の撮影は終わりとなった。
駐車場に着いて荷物を積み込み出発するが、釣り場はまだまだ賑わっていて、それでも何の未練もなく気分好く終了できたのは、この日の思った以上の釣果にすっかり満足していたせいだろう。
乾いた国道を走り、小腹が空いたので道の駅けんぶちに寄ってみたが、名
物の焼きたてパンはほとんど売り切れ状態だった。
当然のことであるが自宅に着くまでの間、延々とこの日の釣りや来シーズンに向けての釣りの話に夢中になっていたこ
とは言うまでもないだろう。


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