2月の釣り Ver.2



 ■ ドカ雪の糠平湖

2月14日 厳寒の次は全道的な大荒れの予報だった。
厳しい寒さは我慢できるが、私の小川製テントは風が強くなると破れてしまう恐れもあるので、今回はメガ弟さんの風に
強そうなコールマンオートUがよさそうと、間借りをお願いすることにした。
数日間雪が降っておらず、出発時にも雪は降っていなかったので国道はアスファルトが現れていた。
しかし層雲峡付近から雪が舞い降りてきていて、大雪湖から帯広方面へ向かった頃には次第に積雪も多くなってきていた。
後続車があったので、たぶんイノケンさんだろうと思い、慎重に走っていた私は三国峠の頂上で彼に道を譲った。
ここからが大変な積雪で、昨夜のうちに降ったのだろうか?40cm以上の積雪があるので、速度を上げるとハンドルが取られるほど厄介な状態だった。
除雪センターに着くと、イノケンさんも休んでいたのでここで合流となる。駐車帯には、これから出動する除雪車が3台ほど待機していた。
五の沢駐車場でメガ弟さんと合流したものの、あまりの積雪に車内
で待機している釣り人が多く、釣り場へ向かった人の足跡はないようだが、前夜のうちに釣り場に向かった人はいるよ
うだった。しばらく躊躇していたが、意を決して出発することになった。  
メガ弟さんを先頭にイノケンさん、そして最後に私が続いて林に突入する・・・道なき道と言っていいほどの積雪で、あっという間に深雪に体力を奪われてしまい、数十メートル進んでは休憩を繰り返すことになった。ソリを引くことよりも、足元がぬかるんで体力の消耗が激しいのである。
息も絶え絶えに何とか氷上にたどり着いた頃、メガ弟さんは随分と先まで進んでいたが引き返してきて、ここからイノケンさんが先頭になって進み、メガ弟さんは私のソリまで引いてくれた。
湖上の積雪は50〜70cmくらいだろうか?常設のテントはほとんど埋もれた状態で、すでにこの時にはいつものポイントまで歩くことは不可能だとメンバー全員が思っていた。
降りしきる雪はみぞれ雪だったので、空に向かって喘いでいると顔が濡れてくるし、防水の上着も表面はびしょ濡れに
なっていた。
最近釣れだしてきたポイントの少し手前で「ここでいいよ、もう・・・」と、この日のポイントが決まった。
テントを立てる為の除雪は二人が圧倒的なパワーで済ましてくれたので、ここでようやく私も作業に復帰する。
テントが設営され、イスに座って落ち着いてみると全身汗でびしょ濡れになっていて、このままだと風邪をひいてしまう
恐れもあったが、幸い気温は高く薄着になっていても寒くはなかったので、次第に汗は乾いていった。

          

ワカサギは仕掛けを穴に入れるとすぐに反応があり、複数匹釣れることも多く情報どおりの好釣だった。
しかし、私とメガ弟さんがワカサギ釣りをしている間に、努力と根性の人イノケンさんは除雪しながらサクラマス仕掛け
の準備をしていたのである。
雪面から50cm以上掘り下げた細い道をつくり、更にドリルでの穴あけをこなしてからようやくテントに戻ってエサとなる
ワカサギを釣り上げていた。さすがである。
しばらくすると次々に釣り人がやってきて、なかにはイノケンさんが除雪した場所に勝手に入り込んでいる、常識を疑いたくなるようなずうずうしい人たちもいたが、広い心を持つイノケンさんは快く場所を譲っていた。
雪がやむと太陽が顔を出し気温はプラスになっていたので、テント内は半袖でもいられるほどに暖かくなっていた。
テントの窓から外を覗くと、近くにこんもりした雪山のオブジェクトのようなものがあることに気付いた。外に出てじっくり見ると、何とそれは常設のテントが雪に埋もれていたことを知る・・・。
常設テントといえば、後から来たベテラン夫婦が「うちのテントに人が入り込んでいる・・・」そんな声も聞こえてきてい
て、後日このご夫婦から聞いた話では、3人入り込んでいた人のうちの一人だけが知った人だったそうだ・・・。
イノケンさんのサクラマス仕掛けだが、一度ヒットしたようだが外れてしまったらしく、この場所でもサクラマスはいることがわかった。
ここで私はイノケンさんが用意してくれていた雪道にドリルを持ち出し、サクラマスの仕掛けをセットした。
沢の流れ込みに近いポイントではたくさんの釣り人が歓声を上げて楽しんでいて、やや沖に離れた私達の周りでも野天釣りをしている人たちがいるほど暖かく、テント内では20℃にもなっていたので「私の部屋よりも暖かいですよ」と、メガ弟さんが言っていた。
そして、正午少し前に仕掛けを点検していたイノケンさんから、サクラマスの仕掛けに魚がヒットしているとお呼びがかかった。
雪の細道を動画撮影をしながらよろめきつつイノケンさんの指し示す竿先を見ると確かに揺れていて、ラインが斜めに
引かれていた。
竿を手にしたイノケンさんが大きくアワセを入れる・・2回目のアワセのときに「ジッ!」とドラグが鳴る音が聞こえてきて
「乗った!」二人同時に同じことを言った。
竿先が大きく曲がりラインがあちらこちらにめまぐるしく動き回りオモ
リが見えてきて、輝くサクラマスが水が染み出し始めている雪の上を跳ねまわっていた。まずまずの腹太サクラマスであった。
このあと、私はもう一本サクラマス仕掛けを投入することになる。
その30分後、私の仕掛けにアタリらしき動きが見られたが、動画撮影をしても
らったのも空しくスカだった・・・。
管理人さんが集金にやってきたときに、いつものスノーモービルで道をつけて欲しかったと冗談交じりに話すと、この雪
ではスノーモービルでもはまってしまうと笑っていた。

          

テントに戻って仕掛けを上げてみたところ、何と5匹のワカサギが掛かっていた。その後、メガ弟さんには6匹の、針数
の7本まであと一歩に迫るワカサギの釣果がみられ、ワカサギだけを狙うならこの場所は好ポイントであることを知っ
た。
13時半過ぎ、サクラマス竿の点検をしてテントに戻ってみると、竿が大きな反応をみせていた。  
軽くアワセを入れてみるとズンと重い手ごたえがあり巻き上げてみる
と、ホスボンのワカサギ竿には手に余るサクラマスのような反応だった。
ワカサギ仕掛けなので慎重に巻き上げていると、現れた魚体は銀色に輝いている。サクラマスだった。
そおっと引き上げた

脱出可能に作られた生簀
が仕掛けが切れてしまい、それでも無事サクラマスは足元で跳ねていた。
下針が上あごに掛かっていて、穴から出たときに暴れて仕掛けが切れたようだった。小振りだったが、釣れるとは思っ
ていなかったのでうれしい一本となった。
その後もワカサギは釣れていたが、みんなまったりとして竿も片付けてしまい、生簀に入れたワカサギを穴の中に逃げられるようにするなどして遊んでいるうちに、風が強くなり始めたので早目に撤収することとなった。風はテントの中の私達の背中を押し付けるほど強くなったので、テントの撤収は慎重に進めてなんとか無事片付けることができた。
帰り道はたくさんの釣り人が歩き固め、太陽が熱で溶かした上を更に釣り人が固めていたので歩きやすく、朝の苦労が信じられないほどの立派な小道になっていた。

           

駐車場ではドカ雪の除雪中で、ロータリー車が高い雪山を林の中に跳ね飛ばしていた。
運転に苦労した国道は、雪はきれいに消えて濡れた路面が現れていて、青空がすっきりと見えていた。





 ■ 2月の糠平湖Ver.4

2月22日 3月2日から禁漁となる糠平湖は、今回を含めて残り2回目となる。土曜日の出撃予定だったが、またしても
天気予報は「大荒れ」だったので日曜日に変更となった。
今回はイノケンさんとの釣行で、現地集合はほぼ明るくなっているだろう6時だった。
途中の層雲峡では雪に見舞われるが、三国トンネルを抜けると雪はやんでいた。しかし、曇り空のせいかぼんやりと明るくなり始めている程度だった。
それでも、除雪センターに着いた時には周囲の景色がはっきりと見える程度に明るくなっていて、駐車場のすぐ横にある白樺林が夜明けを迎えて動いているようにもみえる。
五の沢駐車場は除雪されたばかりなのか、アスファルトが出ているところもあり、イノケンさんはすでに到着していた。
荷物の準備をしていたところ駐車場の反対側を除雪する車がやってきたが、すでに数台の釣り人の車が停められていたために完全に除雪することはできなかったようだ。
入口で待っていると、小学生くらいの子供二人を連れたお父さんとの3人が先に林の中に入り、私達もイノケンさんを先頭に林に入っていく。
数日前に降ったらしい雪は固くなって小道が続いていたが、一歩外れると膝まで埋もれてしまう道なので足元に注意しながらソリを引く。
湖上に出るまでは難なく進み、最近人気のちょっと沖ポイントまでも吹き溜まりなどの歩きにくいところもあったものの、なんとかやり過ご
した。
しかし、ここから先へは先行者がなく、膝まで埋まるところも多かったので、持参したカンジキを装着することにした。
近年、スノーシューなどと称される数万円もするプラスチック製などの高価なものが多いが、日本古来の籐製のものには趣があり、使い勝手は決して引けをとらないのである。長靴に比較すると半分ほどしか埋まらない。これはなかなか良い。
しかし、普通に歩こうとしたために再び体力を消耗することとなる・・・ゆっくり、確実に進むことがカンジキ歩きの基本であることを忘れていた。
先を行くイノケンさんはすでに到着して、テントを張るための足場固めをしていた。メガ弟さんからの助言で、掘りすぎると水が染み出してくるので、除雪せずに踏み固めると快適だと聞いていたためだった。
ようやく到着した私はそのまましばらく呼吸を整えるために仰向けに横たわり、東大雪連峰に目を向ける・・雲に覆われてよく見えないが、その分暖かい
のだろう。
落ち着いたところでテントの設営をはじめ、各自の位置決めが済むとイノケンさんの志願による筋肉トレーニングと称するドリルの連続穴あけが始まった。
テント内にワカサギ用の穴を3箇所、そしてサクラマス用の穴を1箇所あけた。
私とKさんはサクラマスのエサとなるべくワカサギ釣りの準備を始め、イノケンさんはドリルを片手に外へと出て行った。
ワカサギは、9mほどの湖底に仕掛けを落とすとすぐに反応があり、次々に釣れるので夢中になって釣っていたが、テント内のサクラマス
用の穴があったことを思いだし、小振りのワカサギを背掛けして仕掛けを投入してみる。
イノケンさんは外に10箇所もの穴あけをして戻ったが、すぐに次の作業であるサクラマス竿の準備をするために外に出て行った・・・自称「道東一落ち着きのない男」だった。しかし、私から見ると「道東一の努力と根性の人」でもある。
日曜日のせいか、ワカサギの人気ポイントである岸際とちょっと沖ポイントはたくさんの釣り人が楽しんでいて、カラフルなテントの数からも釣り人が次第に増えてきていることがわかる。
7時47分のこと・・・テント内のサクラマス竿の竿先に付けておいた鈴が激しく鳴った。
見ると竿先は大きく揺れてラインは斜めに引っ張られていた。すぐにアワセを入れると確かな手ごたえが伝わったので
「サクラヒット!」と叫ぶと、近くでサクラマス竿の準備中だったイノケンさんが駆けつけてくれた。
私のデジカメで動画の撮影をしてくれている間も魚の引きは強く伝わっていて、ラインはかなり斜めに色々な方向に引っ張られている。
魚が穴に近づいた時には更に強く引かれ、仕掛けが切れないか心配してしまうほどだったが、オモリの次にサクラマスが顔を出し一気に引き抜いた。
このサクラマスは
腹太の34cmで、これまでの2番目となる良型だった。
外ではイノケンさんがサクラマス仕掛けのセットをしていて、雪上に突き刺した準備中の竿を見ると私も俄然やる気が出てきたので、私もすぐに準備を済ませて、3本だが竿のセットが済むとあとは待つばかりである。
9時少し前のこと、テントに一番近い竿から点検を始めたイノケンさんにヒットしているようで、すぐに私も駆けつける。
そおっと竿を持ち上げ、小型胴付きリールの調整をしてからアワセを2回入れた・・・フッキングしているらしく、小声で「のった!」と、イノケンさんが呟く。
動画の撮影をしながら穴に注視していると、サクラマスが首を振りながら顔を出し、ゆっくりと雪上に引き上げられ姿を現した。
ここで私も竿の巡回を始めることにして、期待を胸に細い道を行く・・・・・する
   

イノケンさん2本目
と、イノケンさんは3本目に点検していた竿にもヒットしていると言う。
私の方はというと、3本ともヒットしておらず残念だった・・・。

イノケンさん3本目
 しかし、イノケンさんはその次の竿にもヒットしていて、立て続けに3本のヒットとなったのである。
私達の近くにはサクラマスを狙う釣り人が多く、野天でワカサギとサクラマスを狙う人や、一人でたくさんの穴を息を切らしながらあけている人もいて、それなりに賑やかに感じる。
次の点検は10時15分過ぎから始まったが、生憎の曇り空からは雪が降り始めていて、それでも暖かいのが救われる。
テントから近い短い竿を見ると、穴から下に伸びているラインが糸ふけしていたので期待が高まる。
たるみがなくなるまで巻き上げアワセを入れると少し重いような感覚があったので、もう一度アワセを入れると乗った!
テント内と同様のリールと竿が一体式のものなので、サクラマスのファイトには向かないが引きは充分に楽しむことがで
きて、無事サクラマスを釣り上げることができた。
           

この時、イノケンさんにもヒットしていて、雪をかきわけて行く元気がなかったのでズームで写真を撮らせていただく。
今回の点検ではそれぞれ一本ずつサクラマスを手にすることができ、再びテント内でワカサギ釣りをする。
すると、私にワカサギと違った引きがあった・・・グイグイ引っ張られるような引きはあの魚に違いないと思われたが、少し弱々しかった・・・・小振りのウグイが釣れたのである。
雪が降っていたが風はなく、気温も0℃に近い気温だったのでテント内は暖かかった。しかし、雪は容赦なく振り続けていたので風が出なければいいのにと願う。
11時10分過ぎに一番遠い竿からエサの点検をして、2番目の竿のエサを交換していたときだった。
鈴の音が空耳のように聞こえたので見ると、交換したばかりの一番奥の竿先が揺れており、竿先の様子を伺いながらタイミングを計り、サクラマスがヒットしているだろうと期待して合わせる・・・さほど強い引きではなかったが平均的なサイズのサクラマスが釣り上がった。
昼食を済ませ、12時半過ぎから竿とエサの点検に出かける頃には、心配していた風が少し吹きはじめていた。
エサのワカサギは元気がなくなっていたり、合わせた際に外れてしまうので元気なワカサギに交換していたときだった。
再び交換したばかりの竿先が揺れている・・・駆けつけると糸ふけして
いて、ほぼ確実にラインの先にはサクラマスがいるだろうと予測でき
た。
しかし魚の重さはあまり感じられず、穴に近づいたときに強い抵抗があっただけで美しいサクラマスが姿を現す。
アベレージサイズのやや腹太サクラマスだった。
すでにイノケンさんは5本釣っていたので竿数どおりの釣果だと思っていたが、これでなんとか4本目を釣り上げることができた。
間もなく14時になろうとしていたとき、テント内のKさんの竿に大物がヒットした。
竿のしなり具合からしてサクラマスだろうと判断できたが、氷の穴の端に針が掛かってしまい、外している間に魚はいなくなってしまっていた・・・残念。
14時半過ぎ、テント内のサクラマス仕掛けの変化をKさんが見逃さなかった。
微妙な食い上げアタリで、さほど強い引きはなかったがサクラマスらしい引きを楽しみ、釣り上げることができた。
このサクラマスは小振りだったことと、針が上あごの外しやすい位置だったこともあり、その場でリリースする。
この後はぱったりとサクラマスの姿は消えてしまい、16時の最後の期待した納竿時にもイノケンさんにも私にも一本のサクラマスも釣れなかった。
幸い雪は止んでいて、ぬかるみの
ような雪を踏みしめて進み、その後は踏み固まった小道を行くが湿った雪がソリを重くして、ソリを引くのも一苦労だっ
た。
途中、改造したテントのご夫婦の話を聞くことができた。外見は天井部分だけ強化した小川のテントだが、中を見せてくれてその構造に驚かされた。
中は木材による芯柱が中央に取り付けられていて、床は断熱材が敷かれているのでここでも寝られそうである。
外も角材で補強しているので、かなり強い風が吹こうとびくともしないと言う。ただし、設置や撤収が大変なので一度設置したら簡単には移動できないのが難点だと話していた。
湖上から林に向かう坂道に苦しんでいると、見かねたイノケンさんが自分のソリと交換してくれて、林の中は楽に進むことができた。
それでも先週のドカ雪の釣行を思い出せば、今週の釣行は楽な釣行だったと思わずにいられない。
だが、この後が大変だった。三国トンネルを抜けると吹雪になり、ライトは遠目にできないほどの雪だった。
大雪湖上の樹海トンネルの出口では、その先が猛吹雪であることがわかるほど雪が吹き込み、出ると視界は0mだっ
た。止まるような速度で確かめながら進んでいると、前方からライトを点灯した対向車がこれまたゆっくりとこちらに向か
ってきていた。
その車とすれ違い、次の対向車が見えたとき、その車は完全にこちらの車線を向かってきていて、3mほど前で車線を
修正していたほどだった。ここはいつも風が強い場所なので注意していたが、これほど酷いのは初めてだった。
この猛吹雪は層雲峡まで続き、その後は風も雪も弱まったが、10年以上前のニセコのスキー場に向かう途中の豪雪
以来となるひどく疲れる運転だった。

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